フレグランスアドバイザー MAHO(2014.3.31.)
ルネッサンス期はレオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロなど多くの芸術家を生み出しただけでなく、香水文化も花開き王族や貴族は自分のお抱え調香師を持つようになったようです。
16世紀にメディチ家からフランス王位継承者アンリⅡへ嫁いだカトリーヌの為にフィレンツェの【サンタ・マリア・ノヴェッラ】が調合した「アックア・デッラ・レジーナ」(王妃の水)は、フランスの貴族階級でも人気となり、現在も同薬局を代表する香りとして販売されています。ベルガモットを中心としたフレッシュながらも高貴な香りは、ドイツ発祥のオーデコロン処方の起源とも言われており、香水好きであれば1度は手に取ってみたいものです。
1221年にドニミコ修道院で人々への救済と救護が始められ、1612年、薬製造の薬草栽培と治療活動が
世界最古の薬局サンタ・マリア・ノヴェッラとして正式認可、その後も王侯貴族らに愛される製品を創り続けているのです。
フィレンツェ本店
創業400周年を祝したハーブウォーター
現存する最古の処方は1381年のローズウォーターで、当時の記録によるとワインを薄めたり、薬を飲む為の水代わり、ヨーロッパを襲ったペストの殺菌にも使われたようです。
私も約7年前、念願叶ってフィレンツェ駅近くのサンタ・マリア・ノヴェッラ本店に行くことができました。荘厳な雰囲気と同時に薬局の発祥らしく歯磨き粉やハーブティーなど健康づくりに欠かせない商品も揃っていました。パッケージも伝統を感じさせてくれます。今年5月9日には銀座・西五番街通りに国内旗艦店(TEL03-3572-2694)が再オープンし、ハーブやフレグランス製品の充実と、ボディケアやインテリアフレグランスなどのアイテムをフルラインナップで展開予定。その際、創業400周年(!)を祝したアルコールフリーハーブウォーター「マッジオウォーター」(250ml 3780円)が日本にて新発売されます。ボッティチェリの春に散りばめられているような草花咲くトスカーナの5月がイメージで、アイリスやジネストラ、ローズが香ります。
蘇るニッチメゾン
さて、「パルファム プリ-ツ プリーズ イッセイミヤケ ロー」のトークイベントの為に来日した調香師の
オーレリアンギシャールさんも、香りの歴史に欠かせないのが皮手袋産業だと語っていらっしゃいましたが、カトリーヌの輿入れに同行した調香師がその後パリで香水と皮手袋の店を開いたといいます。
ヴェルサイユが完成した頃には香水の出版物が出されるなど、パリの上流階級では一層香水熱が高まり
ます。マリーアントワネットの香水好きも歴史にも残されていますが、彼女の調香師だったジャンルイ
ファージョンの一族が1720年に創業し、ナポレオンⅢをはじめ数々のロイヤルワラントを持つフレグランス
メゾンが、パリで再び復活し今年から日本にも【オリザルイ ルグラン】で上陸しました。(伊勢丹新宿店
本館1階フレグランスコーナー)
オリザ ルイ ルグラン
尚、「パルファムプリ-ツ プリーズ イッセイミヤケ ロー」については、4/26開催のセミナーにて当理事調香師からご紹介いたしますので、楽しみになさってください。
19世紀になると天然香料に加え合成香料が発明され、香水の大量生産を可能にしたことで特権階級以外でも香水を楽しむ習慣が広がりました。20世紀には数々のファッションデザイナーによる香水も発売されたわけですが、2000年以降は【サンタ・マリア・ノヴェッラ】のようなニッチ系フレグランスといわれ、香調やファッションのトレンドとは連動せずに独自のスタイル、並び小規模生産のメゾンが日本で台頭してきており、都内百貨店での売り場面積も増えています。多様なライフスタイルに合わせ、より自分らしいフレグランスの楽しみ方と選択できる商品が増えてきているのはとても嬉しいと感じています。
寄り添ってくれる香りとともに
草花の持つ自然の香りは、手を加えずとも抗えないほどの魅力を放ちます。しかし私は、ヒトが何かを見たり体験した時に起きるエモーションを香りで表現した、香水というものに興味があります。フレグランスが与えてくれる楽しさをもっと日本の消費者に伝えていきたいという思いで、外資系化粧品会社を退職した後、媒体を通して製品情報の発信、販促イベント、また様々な香水を試していただけるテイスティングサロンの運営などを行っています。
特別な日に纏いたい香りや、日常的に気兼ねなく使える香りまで様々な製品がありますが、それらを実際に香料で紡いでくださる調香師の方々を尊敬し、この協会の活動をアシストさせていただいております。