春を待つ香り 沈丁花
フレグランス&コスメティックコンセプター 新井 幸江(2017.2.3.)
春を待ちわびる冷たい空気の中で、凛と香り立つ花の香り・・・
沈丁花が好きな方はとても多いのではないでしょうか。沈丁花と言えば、「和」の印象を持つ花ですが、以外にも原産は中国中部~南部。
室町時代に渡来し、甘く強いホワイトフローラル系の香りで春の気配を告げます。花の煎じ汁は歯痛・口内炎などの民間薬として使われていたようですが、赤い果実は有毒なので注意が必要です。
沈丁花:香りの印象
ジンチョウゲ科、ジンチョウゲ属:(学名:Daphne odora)。
英文名はWinter Daphneで、ギリシャ神話の女神の名として著名なDaphneに由来するといわれています。
「沈丁花」という和名は、丁子(クローブ)に似た花姿と、香木の沈香のような良い香りから名付けられたといわれていますが、残念ながら、香料原料としての栽培はなされていません。
香りのよい庭木として人気がある沈丁花は、その強さと個性、なじみがあるためか、香料会社によって多くの独自性ある沈丁花のベースが開発されています。
私が以前勤務していたスイスの香料会社においても、フレグランスハンター(世界中の香りある植物を分析する専門の調香師)が来日し、民家の庭先に咲いている沈丁花の香りをヘッドスペース法で採取・分析した楽しい思い出があります。調香素材としては、ホワイトフローラルに加えグリーンな印象も併せ持つ為でしょうか、スズラン(Muguet)同様にナチュラルな印象と女性らしさを合わせ持った香調に使われることが多いようです。
日本で早春を告げる花は多々ありますが、なんといっても香りの強さとその個性で広く親しまれている沈丁花。我が家の庭にも、紅白2種類があり、今年もまた、今を盛りとホワイトフローラル独特の強い香りを楽しませてくれいています。