調香師とガスクロマトグラフィーの関係

調香師 K (2015.10.25.)

 

 調香現場で活躍するガスクロマトグラフィー。調香師にとって、クリエーションや日々の嗅覚トレーニングにどのように役立てているかをご紹介します。

 

調香技術を磨く

 

 画家の卵が巨匠の絵画を模倣するように、またピアニスト・ギタリストが偉大なプレーヤーのコピーをするように、調香師は新しい香りの創造のために、過去の偉大な香水や新しく発売された香りのイミテーションを行います。

 

 その目的で使用する機器がGC(ガスクロマトグラフィー)、気化しやすい化合物の同定・定量に用いられるクロマトグラフィーの一種です。更に検出器に質量分析計(MS)が連結されたものがGC/MSと呼ばれます。仮に得られたクロマトグラムを音楽に例えると、美しいハーモニーとメロディーを2次元で表現することに近いかもしれません。

 

研ぎ澄まされた嗅覚を確認する

 

 調香師は最も優れた検出器である嗅覚と、個々の香気成分として報告されるGC結果を併用してイミテーション香料を作成します。その際大きな成分ではなく、足跡となる小さな痕跡から使用されている天然オイル、アブソリュート、スペシャリティーベースなどの存在をクロマトグラムから読み取り、嗅覚で嗅ぎ分けることがとても重要です。

 

機器は補助であることが調香師の鼻を育てる

 

 分析技術・機器の進歩により過去と比較すると格段に短時間で類似度の高いイミテーション香料の作成は可能となりました。しかし新人調香師のトレーニングステップとしてこれらの機器を使用することには注意が必要です。適度なガスクログラフィーの情報を参考に、ターゲットの香りと自分の創作品を何度も鼻で比較して微妙な差異の認識し、また香りのアコードを会得していくことが最も大切なのです。

 

 新しい香りを追い求める調香師にとって、GCおよびGC/MSは有用ですが、適度に距離を保ちながら利用する不可欠な機器なのです。