フレグランス メゾン探訪 III

アルゼンチン発のフレグランスブランド

2010年に立ち上げられ、日本上陸は2015年の「FUEGUIA 1833」をご紹介。

2017年5月25日 フレグランスアドバイザー MAHO

FUEGUIA 1833

FUEGUIA 1833 12.JPG初めて私がその店を訪れた際にまず質問したのが「1833年からのブランドですか?」だったのを覚えているが、ブランド名の由来はチャールズ・ダーウィンと2度の航海に同行したパタゴニアの少女フエギア・バスケットと、雄大なパタゴニアの自然、当時の偉人達への敬意を込めてのものらしい。

実際、南米が育む自然と感性を反映した製品創りとなっているアルゼンチンのファインフレグランスブランドなのだ。

創業者であり調香師のジュリアン・ベデル氏は1978年ブエノスアイレス生まれ。

祖父母や両親の影響で幼い頃から音楽、建築、絵画などの芸術に囲まれて育ち、弦楽器製作者としても活動していた。そんな彼の新たなクリエーションの場が「香り」なのだという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

植物栽培からパッケージまでを自社で一貫

FUEGUIA 1833 23.JPG2016年には5万ヘクタールものボタニカルセンターを設立し、アマゾンやアンデスの植物育成を行っている。

同時に香料の抽出ができるラボではsupercritical CO2を利用し香料抽出をしている。

調香を行うファクトリーはミラノに構え、植物の育成と採取、エッセンス抽出、調香、製造、パッケージという工程を自社で行うこだわりだ。

なかには香料として用いられたことのない植物も採用する挑戦や、polycyclic muskや動物由来の素材を避け、植物由来のムスクの香りやオーガニック原料のエタノールを積極的に使用し、生分解性に配慮するだけでなく、100mlボトルのパッケージとなる木箱はパタゴニア産の倒木を再活用し、資源の保護にもつなげている。

 

 

 

 

 

 

 

アイデンティティの継承

FUEGUIA 1833 32.JPG店内中央にずらりと並べられた香水瓶の上に香りを吹き付けたフラスコが逆さにかぶせられ、アート実験室のように印象的な店内だが、かなりの数の製品の中でもひときわ目を引くのが『アマリア グルマン』。

液体の赤色は着色したのではく、調香の結果おきた化学反応によるものだという。ビジネスパートナーの一人であり、食いしん坊でジャスミンが好きな友人のアマリアに捧げるグルマンな香り。

この、人生を“記憶に残る旅”へと変える人物にインスパイアされた「Personajes」コレクションには、シダーとベチバーの力強さをグレープフルーツのフレッシュさで潮風と船と航海を思わせる作品にした『ダーウィン』もある。

詩人ボルヘスの作品に潜む香りの謎「Jorge Luis Borges」コレクションには、中東の空気を“千夜一夜物語”になぞらえ、カシスをイランイランとパチュリで彩るエキゾティックな組み合わせの『アルギィエン・スエニャ(誰かの夢)』などがある。私はこれにジャン デプレのSheherazadeを懐かしんで思わず買ってしまった。

 

 

FUEGUIA 1833 4.JPG画期的な試みのビジネスモデルを飲み込めずにいた私の長い質問に丁寧に答えてくれたジュリアン氏からは、大柄ではないもののラテン系の男性の力強く情熱的なムードと、香りを通してアイデンティティを伝えようとする真摯な姿勢が感じ取れた。

私個人としては、天然香料を高らかに謳っている香水が全て良いと思っているわけではないが、ボトルに製造番号と年度を記し、まさにワインのヴィンテージのように製造ロットによって香りに(価格も)違いが生じることを大量生産でないからこその魅力として提供する「FUEGUIA 1833」の面白さととらえているし、アルゼンチンや日本を含み世界8カ国のみのブティックで展開しているだけだが強いメッセージ性を込めたメゾンの登場に、今後も誕生するであろうニッチブランドの在り方の一つが示されている気がしている。