ご当地の香り U

 

2015年11月に地域開発に協力する事業「ご当地フレグランス」について書いたが、第2弾として「掛川(静岡県)」「石垣島(沖縄県)」「福山(広島県)」の3つの香りについて紹介したい。

2017年02月 

調香師 上田知典

静岡県掛川  爽やかで優しい日本茶の香り 

先ず「掛川(静岡県)」だが、静岡県掛川市はご存じの通りお茶の一大産地である。どんな香りを依頼されたかというと、第一に看板である「お茶」の香り、それも掛川のお茶の特長を踏まえたもの、そして掛川市に深く根付いた「報徳思想」を盛り込んだ香りであった。ちょうど収穫時期だった新茶の香気成分を分析したところ、ゲラニオールが他産地の茶より多いことが分かり、それを多く配合することで掛川茶の特長とした。そして報徳思想についてだがその精神である優しさ、温かさを持った原料(ウッディ・アンバー・ムスク等)を比較的多めに配置して、お茶の香りを骨格にして爽やかで優しい香りのフレグランスに仕上がった。

掛川茶1.JPG掛川茶2.JPG

沖縄県石垣島 優しさのあるフローラルスイートな香り 夜香木(ナイトジャスミン)

次に「石垣島(沖縄県)」だが、沖縄県石垣市石垣島は言わずと知れた南国リゾート地である。南国の海やフルーツを思わせるような香りを依頼されると思っていたが、石垣島に古くから自生している夜香木(英名ナイトジャスミン)という花の香りをキーノートとした香りを依頼された。夜香木は茄子科で開花時期は初夏から秋にかけて、原産地は西インド諸島、特徴は「ナイトジャスミン」という名の通り、夜8時くらいから咲き始め、ほのかに甘い香りを漂わせる木。朝になると花が閉じる。白い筒状の花で夜に咲き朝閉じることを繰り返す。この花は石垣島に住む人たちには島を代表する花の香りであるようだ。先ずこの花を探すことから始めたが、なかなか見つからない。3〜4時間かけてやっと見つけ、香りを採取、機器分析したところ、なんとベンジルアセテート(ベンアセ)が香気成分の半分を占めていることが判明した。これをそのままフレグランスの処方に反映するとベンアセの香りしかしなくなるので最終的には十分の一の量に落ち着いたが、ジャスミンの香りからインドールを抜去(香気分析ではインドールは0)したような骨格に、島の自然を感じさせるようなシトラスやグリーンやフルーティノートを付与し、そこで生まれた命の優しさを込めたウッディ・ムスク・アンバー・パウダリーノートも付与した優しさのあるフローラルスイートな香りに仕上がった。

ナイトジャスミン1.JPG

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広島県福山 爽やかで優しいばらの香り ローズマインドふくやま

最後に「福山(広島県)」だが、広島県福山市には「百万本のばらのまち」を目指し、ばらを通じて“思いやり・優しさ・助け合いの心”を表す「ローズマインド」を育んでいこうという想いがあるとのこと。ここで依頼された香りはもちろんばらであった。市制百周年にちなんで命名したばら「ローズマインドふくやま」という品種はティーローズであったためにティーローズノートを核として瀬戸内の爽やかな海を思わせるシトラス・フルーティーノートや鞆の浦のノスタルジックな風景を思わせるジャスミン・マグノリア・ウッディノートを付与した爽やかで優しいばらの香りに仕上がった。2月中旬に記者発表され、筆者も僭越ながら列席し香調を説明したが、製品は2017年4月1日から発売される。

2Fukuyamaローズ.JPGFukuyamaローズ1.JPG

余談だが、筆者は創った香りが「優しい」と評価されることが至上の喜びである。優しい香りとは多くの原料が上手く調和していてどれも飛び出ていない、正に調香師が追及するベストハーモニーである。これからも多くの方に「優しい」と評価される香りを多く創り出していきたい。以上