香りと本能

嗅げば嗅ぐほど好きになる香り、そんな香りって本当にあるのだろうか・・・。

所謂クセになる香りでしょうか、そんな香りが開発できれば必ず製品購入のリピート率が上がるはず、

ある製品でそんなコンセプトの香りの開発に関わることになりました。

調香師 上田 知典 (2013.12)

推測と調査の試行錯誤

 先ず始めに、たくさんの香料素材や香調(調合)をスクリーニングし、

一回目より二回目三回目の嗜好が上がる香料を選別してみると、

「濃厚なフルーティやスイート」な素材や香調が連用で嗜好が上がる特徴を持っていました。

他にもシトラス類やスパイス類にも同様の傾向が確認できました。

そして出来上がったのは「濃厚な甘さのあるフルーティノートがキーになっている艶やかな色香漂う香り」でした。

      カシス.png     クランベリー.png     ピーチ.png 

習慣による嗜好という壁

しかし、使用テストをしてみると嗜好が思ったほど高くない。

他社の香りは爽やかなフローラルグリーンやフローラルフルーティが大半を占めているため、

違和感があるからなのか・・・。

香りの嗜好は習慣に左右されやすいものです。

今までに無かったような香りは確かに斬新でインパクトはあるが、いい香りとして認知されるには時間が掛かります。

連用で上がる嗜好

       ライチ.png     マンダリン.png     ペアー.png

前述の製品の香りも徐々に認知され、同時に嗜好も上がってきました。

このように、連用で嗜好が上がることも確認され、開発としては目出度し目出度しとなり、

胸を撫で下ろした次第です。

香り開発の考え方

香りを開発する場合、嗜好とコンセプトのバランスが非常に大事です。

嗜好は基本性能の動力系でコンセプトはスタイルを作っている車体部分と、車に例えたりします。

動力系があってこその車体、無ければ動けない、車体が陳腐だと魅力が無い。

香りの場合のバランスは、嗜好が良くなければ見向きもされない、

コンセプトが見えないとブランドとしての価値が下がることから、

嗜好が大部分でコンセプトが若干という割合が妥当なところかと思っています。